ファクタリングの利用方法
ファクタリングは企業が保有する売掛債権をファクター(資金調達の専門業者)に売却し、早期に資金化する仕組みです。特にキャッシュフローの改善や運転資金の確保を目的として多くの企業に利用されています。以下では導入前の準備から実際の取引手続き、取引後の回収・精算までの流れを詳しく解説します。
利用の前提条件
ファクタリングの利用にあたっては、翌月や翌々月など一定期間後に入金予定のある売掛債権が必要です。具体的には取引実績があり、請求書や納品書など債権の裏付けとなる書類が整備されていることが前提となります。また、取引先が法人あるいは個人事業主で、取引先の信用状況が明確であることも重要です。利用開始にあたっては以下のような準備を進めます。
- 過去数か月分の売掛債権明細書を整理し、入金予定日や金額がわかる形でまとめる
- 取引先との契約書や請求書、納品実績を確認し、債権の存在を証明できる書類を用意する
- 自社の法人登記簿謄本や決算書、試算表など、財務状況を示す資料を整える
申し込みから契約締結までの流れ
ファクタリングの申し込みはウェブサイトや対面で行えますが、申し込み後は担当者とのヒアリングが行われます。担当者は債権の内容や取引先の業種、入金サイトなどを確認し、取扱可否や手数料率の見積もりを提示します。提案内容に同意すると、ファクター側と「債権譲渡契約書」や「秘密保持契約書」を交わします。契約書には債権の売却日や債権譲渡登記の有無、リコース(買戻し義務)の有無、手数料の算出方法などが記載されます。契約締結後、取引先にも譲渡の通知(または承諾)を行い、債権譲渡の手続きを正式に開始します。
売掛債権の売却手続き
契約締結後は実際に売却する売掛債権をファクターへ譲渡します。売却対象となる債権は請求書単位や取引先単位で選択できるケースが多く、自社の資金ニーズに合わせて部分的に売却額を設定できます。売却手続きはオンラインのポータルサイトにアクセスし、債権の明細をアップロードする方法や、専用フォーマットに記入してメール送付する方法などが一般的です。提出後、ファクターが債権の内容を最終確認し、問題がなければ指定口座へ資金が振り込まれます。
資金受領と手数料の精算
ファクタリングでは売却金額の約百分の数十程度を手数料として差し引き、残額が指定口座に入金されます。入金までのリードタイムはファクターや選択したプランによって異なりますが、最短で当日振込を受けられるサービスもあります。多くの場合、翌営業日から数営業日以内に資金が手元に届き、急な支払いや仕入れ代金、給与支給などに活用できます。手数料の支払い方法は、資金受領時に自動的に差し引かれるケースが一般的ですが、月次でまとめて請求されるプランもありますので、契約時に確認が必要です。
回収と最終精算
債権譲渡後は、取引先への代金回収業務をファクターが代行します。取引先から入金があった段階で、ファクターは入金額を確認し、先に支払われた資金との差額を精算します。もし取引先が支払を遅延した場合でも、ファクターが督促を行うため、自社は回収業務の負担を軽減できます。リコースなしの契約であれば、万が一取引先が倒産して回収不能になった場合でも、自社に買戻し義務は発生しません。契約形態に応じた精算が完了した時点で、取引は終了となります。
活用における留意点
ファクタリングは短期間で資金を調達できる一方、手数料が発生するためコスト管理が重要です。利用頻度や売却債権の金額を踏まえ、複数社の見積もりを比較検討するとよいでしょう。また、リコース有無や債権管理方法、入金サイクル、通知方式など契約条件は会社ごとに異なるため、自社の資金繰りや内部業務フローに適合するサービスを選ぶことが大切です。さらに、債権譲渡の対象を定期的に見直し、無駄のない売却計画を立てることで、より効果的にキャッシュフロー改善を図れます。
以上がファクタリングの基本的な利用方法です。適切な導入と運用を行えば、資金調達の効率化や業務負担の軽減につながりますので、自社の状況に合わせた活用を検討してみてください。
